安藤英治先生の思い出

安藤先生の学者としてのお姿、教育者としてのお姿は、多くの方々により書き示されていることですが、それ以外の姿で意外と知られていないことがあることが分かりました。安藤英治先生のあまり通常は見られない、音楽との情景を書いてみようと思います。

どんなきっかけかは忘れましたが、安藤先生の青春時代を先生ご所蔵のレコードを聞きながら語っていただこうと企画が持ち上がり、先生にお話しましたら、快諾していただき、昭和56年7月2日 土曜日の午後、図書館の1階の視聴覚小ホール(当時)で、先生ご所蔵のSPレコードを中心とした愛蔵盤をお持ちいただき、手回しのゼンマイ駆動SPレコードプレーヤーで再生し、「SPの思い出話 戦前の名曲喫茶店」と題して、戦前の名曲喫茶店の思い出や、名演奏家シャリアピン、ガリクルチ、メニューヒン、などの思い出など、先生の若き情熱をたぎらせた時、苦悩の時にどのようなレコードを聞かれたのかなどをお話くださいました。(成蹊大学図書館報 緑陰堂文庫ニュース 第4号8頁 先生の話されている写真付)珈琲を飲みながらの先生の若さあふれる情熱に満ちたお話は、集った20余名の人々の感動を呼び、お話の後、参加者との対話を行い、名残惜しく会を閉じた思い出があります。

 このことがきっかけとなり、その後、安藤先生がたびたび、視聴覚事務室を訪れることになります。その用件は、先生愛蔵のレコードはSP盤であったため、ご自宅での視聴は不可能となり、視聴覚事務室にて原盤よりカセットに写して差し上げることが視聴覚室の仕事となり、カセットが切れたり、動かなくなったりすると、また、来室され、新しいカセットに新調したもので、そろそろかなと直感すると、先生が現れるという、スリリング?ものでした。

 そのレコードは、バッハの 「フーガの技法」で、難解な曲といわれますが、戦前のSPレコードでも状態が大変よく、また、演奏が弦楽四重奏によるもので、とても珍しく、先生曰く、「これは現代のジャズだよ、即興演奏だよ」といつも、感動深く話される姿は、印象的でした。

 また、もう一枚、大変短い曲で、「コルニドライ」(ヘブライの古い聖歌、コルニドライは神の日を意味する=クラッシク音楽作品名辞典=三省堂)でした。大変荘重な不思議な曲です。その2組のレコードが、安藤英治先生の音楽を象徴しているように思えました。

平成16年4月4日成蹊桜祭で、お話をさせていただきました補記を書かせていただきました。

 成蹊学園情報センター 虻川譽之(あぶかわたかゆき)

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