回想のマックス・ウェーバー
―― 同時代人の証言 ――
安藤 英治 聞き手
亀嶋 庸一 編
今野 元 訳



■体裁=四六判・上製・カバー・280頁
■定価 3,360円(本体 3,200円 + 税5%)
■2005年7月13日
■ISBN4-00-022452-2 C0030

戦後のウェーバー研究に屹立する安藤英治は,1969年から1年間のドイツ留学のさい,ウェーバーゆかりの人びとを網羅的に訪ね,晩年のウェーバーの生活とその人格を活写する貴重な証言を蒐集した.当時の録音テープが発見されたのを機に,この貴重な資料の全文を,訳者による詳細な注釈を付して翻訳刊行する.
岩波書店
編者からのメッセージ

 本書には,エルゼ・ヤッフェやヘルムート・プレスナー,そしてウェーバーとの交流経験を持った日本人亀井貫一郎らウェーバーの同時代人たちへのインタヴュー,さらにカール・シュミットの書簡等の資料が収録されている.これらの歴史的資料は,日本の一ウェーバー研究者の情熱と執念によって初めて誕生しえたのであり,それ故本書は文字どおり東西の「ウェーバーに魅せられし人々」の出会いが生んだ,ウェーバーの人と思想に迫る貴重なドキュメントといえるであろう.
 1969年3月からのほぼ一年間,ミュンヘンの「マックス・ウェーバー研究所」(当時)の客員教授としてドイツに滞在した安藤英治は,ウェーバーに関する調査・研究の一環としてウェーバーの同時代人たちへのインタヴューを精力的に行った.その成果の一部は,すでに『ウェーバー紀行』(岩波書店,1972年)で紹介されている.安藤は帰国後にもインタヴューを続けたが,それらのテープは公刊されることなく安藤の死後に遺品の中から発見された.今回,気鋭の若手ウェーバー研究者の厳密な校注により,この歴史的成果の全貌がついに明かとなる.

(亀嶋庸一)


編集者からのメッセージ

 戦後は長らく社会科学の時代でした.社会をトータルにとらえ,そこに働きかけてよきものに変えてゆく,という理想が生きていた時代でした.しかしいつのころからか,社会を変えるより自分を変えるほうが手っ取り早いということになり,「哲学」の時代になったように見えます.戦後社会科学の最大のテーマのひとつウェーバーも,いまや遠くなりました.しかし本書をひもとく読者は,この社会科学の創造者の人格や情熱,燃え立つような問題意識についての同時代人の証言から,社会科学という営為が,なまなましい思想的苦闘の結実であるということを実感されるのではないでしょうか.


著者紹介

安藤英治(あんどう・ひではる)
1921年生まれ.慶應義塾大学経済学部在学中に学徒出陣で海軍に入隊.戦後は成蹊大学教授として,ウェーバー研究に専心する.1987年成蹊大学名誉教授.1998年死去.主な著書に『マックス・ウェーバー研究』(未,1965年),『ウェーバー紀行』(岩波書店,1972年),『マックス・ウェーバー』(講談社,1979年),『ウェーバー歴史社会学の出立』(未,1992年)などがある.

亀嶋庸一(かめじま・よういち)
1949年生まれ.成蹊大学法学部教授.現代政治思想専攻.主な著書に,『ベルンシュタイン――亡命と世紀末』(みすず書房,1995年),『20世紀政治思想の内部と外部』(岩波書店,2003年)などがある.

今野元(こんの・はじめ)
1973年生まれ.ベルリン大学Dr.phi.号取得.日本学術振興会特別研究員(東京大学法学部).主な著書に,『マックス・ヴェーバーとポーランド問題』(東京大学出版会,2003年)などがある.


目次

まえがき(今野元)

《インタビュー篇》
I エルゼ・ヤッフェ
II ヘルマン・ベーラウ一家
III エミー・デルブリュック
IV ヴィルヘルム・シュティッヒヴェー
V エドゥアルト・バウムガルテン
VI エドガール・ザリーン
VII ヘルムート・プレスナー
VIII イマヌエル・ビルンバウム
IX 亀井貫一郎

《付篇》
X イェルク・フォン・カプヘル男爵の弔辞
XI カール・シュミットの安藤英治宛書簡
           *
訳注
『回想のマックス・ウェーバー』の意義(今野元)
安藤英治の「内なるウェーバー」の旅(亀嶋庸一)
あとがき(亀嶋庸一)
索引
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